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東京高等裁判所 昭和53年(ラ)193号・昭53年(ラ)187号 決定

ところで、上記仮登記担保契約により債権者が有する権利の内容は、特段の事情の認められない本件においては、債務者に履行遅滞があった場合で債権者が予約完結の意思表示をしたときは、債権者は目的不動産を処分する権能を取得し、これに基づいて、当該不動産を適正に評価された価額で確定的に自己の所有に帰せしめること又は相当の価格で第三者に売却等をすることによって、これを換価処分し、その評価額又は売却代金等から自己の債権の弁済を得ることにあるものと解すべきである。そして、右不動産の評価額が債権者の債権額及び換価に要した相当費用の合計を超えるときは超過分を清算金として担保提供者に交付すべきものであり、他方担保提供者は清算金の支払を受けるまで本登記手続義務の履行及び引渡を拒むことができるのであって、債権者が債務者の履行遅滞を理由として代物弁済予約完結権を行使しても、目的不動産の所有権はこれにより直ちに債権者に移転するものではなく(昭和五〇年七月一七日最高裁判所第一小法廷判決)したがって、目的不動産上の抵当権並びにその被担保債権も直ちに消滅するものではないと解するのが相当である。

本件についてみるに、本件抵当権の目的不動産の評価額は最低競売価額で二、五七七万円、競落価額で四、七三〇万円であり、他方、債権額は金四九七万五三八九円及び内金四五〇万円に対する昭和五〇年六月四日以降年一八パーセントの損害金であるから、本件仮登記担保契約においては、債権者において右担保権を実行するためには清算金を支払う必要があり、担保提供者は右清算金の支払を受けるまで目的不動産の本登記手続を拒み得る関係にあることが明白である。

そうすると、本件において債権者が代物弁済予約完結権を行使したとしても、それによって目的不動産の所有権が直ちに債権者に移転したものとはいえないし、目的不動産につき債権者が代物弁済による所有権移転本登記を経由するに至っていない以上、抵当権及びその被担保債権が消滅したものと認めることもできない。また、債権者は、本件競売の申立をする前に代物弁済予約完結の意思表示をしたものであるが、右競売申立により仮登記担保権の実行を撤回したものと認められるところ、債権者が代物弁済予約完結の意思表示をしただけでの段階で仮登記担保権の実行を撤回し、改めて抵当権の実行を選択して目的不動産につき競売申立てをすることは、債務者、担保提供者の利益を害するものではなく、他の債権者を害する等の特段の事情のない限りこれを禁ずべき理由はない。

(外山 近藤 鬼頭)

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